貸し方を変えれば、建物は生き続ける

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2026.08.28
施工金額 600万円(税込)
物件種別 その他
リノベーション形態 その他
リノベーション内容 その他
居住人数 3人
家族構成 その他
築年数 45年
エリア 首都圏
面積 146.92㎡
施工期間 3か月
構造 鉄骨造/地上4階建

間取り

Before3LK+オフィス

After3LK+オフィス

この建物は、かつて工務店を営んでいたオーナーの父によって建てられた。1階はガラス張りのオフィス。重厚な受付カウンターや天童木工の応接家具、自動ドアを備えた、丁寧につくられた仕事場だった。

2階には掘りごたつのある茶の間と水回り、3階には広々とした全面畳敷きの和室、4階には窓まわりなどに美しい造作が残る2つの個室がある。仕事場から暮らしの場まで、階ごとに異なる表情を持つ一棟には、父ならではの工夫と手仕事が随所に刻まれていた。

建物を受け継いだオーナーは、一棟を賃貸として活用することを決めた。しかし、用途を先に定めて内装を一新すれば、建物の個性まで失いかねない。そこで完成形をつくらず、現地に募集ポスターを掲示し、現状のまま見学会を開催。「ここで何をしたいか」を自由に想像してもらうと、さまざまな構想を持つ人たちが集まった。

建物の個性は、貸しやすさと引き換えに消されてきた。個性を残せば借り手を選ぶため、万人に受け入れられる状態へ整える。それが、これまでの賃貸の常識だった。

築40年を超える当物件に残る、全面畳敷きの和室や年代を感じさせる造作も、個性であり借り手を選ぶ課題だった。全面改修すれば貸しやすくなるが、工務店を営んでいたオーナーの父が手をかけた造作は失われてしまう。

加えて、建設費が高騰し、既存ストックの活用が求められる今、建物を市場に合わせるのではなく、市場とのつなぎ方を変えた。先に完成形をつくらず、この個性を面白がる使い手を探したのである。

出会いを生んだのは、建物に直接貼った一枚の募集ポスターだった。地域で探す人へ直接届け、「この空間をどう使うか」と創造力を刺激した。こうして、10年以上飲食や場づくりに携わってきた夫婦と出会った。

改修は店舗となる1階と、営業に必要な水回りや空調が中心。既存の家具や造作を生かし、借り手自身もモザイクタイルや左官を施した。2階以上は大きく変えず、暮らしや音楽、表現活動の場として活用している。

使い手との関係を設計し直せば、古さや癖は価値へと反転する。全面改修の費用と廃棄物を抑え、建物の記憶を受け継ぐ。これは、建物ではなく、賃貸の仕組みと常識をリノベーションした事例である。

⼿掛けたリノベーション会社

所在地 〒213-0001 神奈川県川崎市高津区溝口2-15-1
対応エリア 東京都・神奈川県
連絡先 044-829-3324

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