「借主負担DIYの賃貸借」という新しい指針(ガイドライン)を2014年3月に国土交通省が提示したことが話題を呼んだ。空き家が増加しているといった住宅市場の実態や、地方への定住、地元や田舎に移住するUIJターンに見られる居住ニーズの多様化といった利用者側の意識などを分析したうえで、「取組み推進ガイドライン」「賃貸借ガイドライン」「管理ガイドライン」の3つのガイドラインが提示された。
その中で「賃貸借ガイドライン」では、個人が自宅を賃貸化する際に活用が考えられる、A~Cの3つの契約形態を提示している。Aタイプは「賃貸一般型」、Bタイプは「事業者借上げ型」(いわゆるサブリース型)で、これまで賃貸住宅で多く活用されている形態だ。Cタイプが「借主負担DIY型」という新しい形態で、借主が自己負担でDIYを行う際の指針をまとめている。借主が必要に応じてDIYを行うことにより賃貸でも自分らしく住むことができる、カスタマイズ・DIY型賃貸について解説したい。
国土交通省が示した「借主負担DIY型」について、もう少し詳しく知ってもらいたい。
一般的な賃貸住宅(A・Bタイプ)では、
・貸主が貸し出す前に自己負担で必要な修繕や清掃を行う
・入居中の修繕は原則として貸主が負担して修繕する
・借主が壁紙の貼り替えなどの模様替え(DIY)を行うことは原則禁止
・退去時には通常の損耗や経年劣化を除き、借主には原状回復が求められる
・賃料は市場相場並みに設定される
これに対し、借主負担DIY型(Cタイプ)では、
・貸主は原則として、入居前や入居中の修繕義務を負わない(主要な構造部分は貸主が修繕)
・借主が自己負担で修繕や模様替えを行う
・その箇所については退去時に原状回復義務を負わない
・賃料は市場相場よりも安く設定される
DIY型の貸主のメリットは、
・自己負担や手間をかけずに貸せること
・DIYを行った借主が長期間する可能性が高く安定収入を期待できること
・退去時にDIYでレベルアップした状態で戻ること
借主のメリットは、
・持ち家のように自分の好みで模様替えができること
・自己負担を加味した安い賃料で借りられること
・工夫次第で自己負担の額を下げられること
・DIYした箇所を前の状態に戻す義務がないこと
となる。
DIYの留意点としては、例えばエアコンを取り付けたり、シャワーヘッドを交換したりといった取り外しが可能な「造作(ぞうさく)」について。ガイドラインでは、借主が行った造作について、退去時に貸主にそれを買い取るよう請求することはできないが、そのまま残すか借主が持ち去るかは双方で協議をすることとしている。
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