老朽化した住まい、安全に暮らしていくにあたっては、「丸ごと建て替え」あるいは「大規模な改修」と、大きく分けて2つの選択肢が考えられます。 どちらを選ぶべきと一概には言えません。ここでは「スケジュール」、「メリット」、「コスト」という3つの軸で比較解説。 大きな決断の参考にして欲しい。
まず、「建て替え」と「リノベーション」で大きく異なるのがスケジュール。 建て替えの場合、解体→「滅失登記」→新築が「表示登記」「保存登記」の登記のスケジュールが必要になる。「滅失登記」は建物解体後に、工事人の取り壊し証明をつけて法務局で手続きするもの。 これを怠ると、古い建物と新しい建物、両方に固定資産税の課税通知が来てしまう場合もある。
また新しい家が引き渡されたら、土地家屋調査士に「表示登記」を、司法書士に「保存登記」をそれぞれ依頼することになる。
一方、「リノベーション」の場合も、一戸建であれば、増築や間取り変更といった大幅な改修を伴うリノベーションであれば事前の届け出(自治体へ「建築確認申請書」提出)がマストになる。
また、マンションの場合は、たとえ小規模であっても管理組合の許可が必要となる。 分譲マンションの管理規約に記載されている「リフォーム工事に関する」取り決めを確認しして欲しい。
家の規模や工事内容によって異なるが、工期の目安は「建替」の場合で4カ月~半年、一方「リノベーション」の場合は約1カ月、大がかりなものでも3カ月程度です。 参考までに、リノベーションの段取やスケジュールについてはこちらを参考に(「リノベーションの進め方(全体スケジュール編)」「リノベーションの進め方(詳細スケジュール編)」
「建替」時のスケジュールで注意して欲しいのは、「登記手続の期間」他に、「再建築可能物件であることの確認」、「仮住い期間と場所」である。ゆとりのあるスケジュールを組むことが必要である。
次にそれぞれの「メリット」を比較してみましょう。 それぞれのポイントを客観的に見つめることにより、大きな判断材料になるはずである。
まずは、「リノベーション」のメリットを挙げてみよう。
・既存の家の柱などを活かし、愛着のある家を引き続き利用することができる
・「建替」に比べ、総コスト(工事費・諸費用・各種税金)が抑えられる
・「建替」に比べ、工期が短い
「リノベーション」を選択する最も大きな理由は、コスト面となるであろう。 「建替」の場合は新築と同様の工事費用に加え、解体費用や各種手続きにかかる諸費用、さらには税金や仮住まいの家賃なども加算されてくる可能性がある。
一方で、大がかりなものでも基礎や構造部分は既存のものを使用する「リノベーション」では工事費はもちろん、建物の登記・申請費用などの諸費用、不動産取得税・登録免許税といった税金もカットできるわけである。
次に「建替」のメリットは何か?間取りや設備を見直せる設計の自由度、ローンの組みやすさなどが挙げられる。 長年住んだ家の愛着は失われるが、新築の心地よさもそれと同等に価値あるものといえるかもしれない。
かかる「コスト」は「建替」>「リノベーション」ですが、具体的にどれくらいの差があるのでだろうか?
家の劣化具合などによってはその後のメンテナンスコストが嵩み、中途半端にリフォームをしたほうがかえって高くつく場合もある。
「建替」費用の目安となるのが、注文住宅建築者の平均建築費用です。
リクルート住まいカンパニーが実施している「注文住宅動向・トレンド調査」の2018年版によれば、注文住宅の平均建築費は2807万円となっている。
もちろん、新築する家の規模や設備によってコストは異なるが、ひとつの指標にはなるだろう。 さらに、建て替えの場合はこれに加え、3.5~4.0万円/坪程度の「解体費用」もプラスされる。
仮に20坪とすると解体だけで70~80万円。加えて、諸費用や税金なども含めると、物件価格+150万円くらいは見ておく必要がある。 一方で、仮に延べ床面積50㎡程度の建物をリノベーションした場合、スケルトンから作り込んだ場合は600~900万円が相場となる。
これに加え、デザイン設計料や諸費用が上乗せされる。 たとえば、工事費600万円の「リノベーション」のケースでは、デザイン設計料や諸費用、工事中の仮住まいが必要になった場合でも、総コストは750~900万円といったところである。このように、「リノベーション」の方が大幅にコストを圧縮できるわけである。しかし中途半端に改修したばかりにその後の維持費用が嵩み、結局は「建替」と変わらないコストがかかってしまうようなことがある。
「建替」と「リノベーション」どちらも一長一短あるが、迷うようなら、リノベーション会社に話を聞いてみるのも手である。
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